第5章 製鋼スラグ混合粘性土の固化に関する知見の整理
NotebookLM.icon
第5章「製鋼スラグ混合粘性土の固化に関する知見の整理」では、第3章と第4章で得られた知見を基に、製鋼スラグ混合粘性土の固化によるせん断強度発現に影響を与える各因子が、どのように作用するかを体系的に整理しています。この章では、カルシア改質土のデータも参照しながら、粘性土および製鋼スラグの各因子が、製鋼スラグ混合粘性土が安定的に固化し、せん断強度を発現するためにどのように影響するかをまとめています。
主要な内容は以下の通りです。
粘性土の非晶質シリカ含有率の影響:
せん断強度への影響: 粘性土(有機物をほとんど含まないカオリン粘土とメタカオリンの混合土)において、非晶質シリカ含有率が高いほど、養生28日までのせん断強度が大きくなる傾向が見られました。ただし、養生84日以降の長期養生では、必ずしも非晶質シリカ含有率が高い方がせん断強度が大きくなるわけではないケースもありました。
せん断強度発現傾向(経時変化)への影響: 非晶質シリカ含有率が高い粘性土は、せん断強度の急増が早期に起こる傾向を示しました。一方、浚渫土(カルシア改質土)の場合、非晶質シリカ含有率の違いによるせん断強度発現傾向への影響は小さいと考えられ、浚渫土の産地に関わらず、固化が進む場合は概ね同等のせん断強度発現傾向を示し、他の粘性土に比べて早期にせん断強度を発現する特性があります。
製鋼スラグの遊離石灰量の影響:
従来のカルシア改質土の研究では、製鋼スラグの遊離石灰量が多いほどせん断強度が大きくなるとされていましたが、本研究では、遊離石灰量が約3.5%以上の製鋼スラグを用いる場合、製鋼スラグ混合粘性土のせん断強度やせん断強度発現傾向への影響は小さいと示されています。
その他の材料因子の影響:
粘性土の含水比: 含水比が低いほどせん断強度は大きくなりますが、せん断強度発現傾向への影響は小さいと考えられます。
製鋼スラグの粒度分布: 粒径が小さい方がせん断強度は大きくなる傾向がありますが、せん断強度発現傾向への影響は小さいとされています。
拘束圧条件の影響:
製鋼スラグ混合粘性土に混合後すぐに拘束圧を作用させて圧密を行うことで、せん断強度が向上しやすくなることが分かりました。
このせん断強度を向上させる効果は、従来のセメント改良土よりも顕著であることが示されました。
せん断強度の増加の主な要因は、圧密による乾燥密度の増加と含水比の低下であり、養生中の拘束圧そのものの影響よりも大きいことが明らかになりました。これにより、拘束圧の作用による圧密が、製鋼スラグ混合粘性土の固化に伴うせん断強度の増加を促進することが可能であると結論付けられています。
総括として、製鋼スラグ混合粘性土のせん断強度とその発現傾向には、粘性土の非晶質シリカ含有率が非常に大きな影響を与えることが示されました。そのため、粘性土の非晶質シリカ含有率を測定することで、混合後のせん断強度発現のしやすさや、固化してせん断強度が急増するまでの時間を予測する判断材料となる可能性が指摘されています。また、拘束圧を作用させて圧密を行うことが、製鋼スラグ混合粘性土の固化を促進する有効な手段であることも強調されています。
#2025-08-14 16:06:24